いちじくのタルトを描きました|影から塗りはじめる水彩の描きかた

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いちじくのタルト 透明水彩
いちじくのタルト|透明水彩

いちじくって昔はすごく苦手だったんですが、大人になってから大好きになった果物なんですよね。

ぶちぶちしてて少しグロテスクで…いつからこんなにお洒落フルーツとして君臨するようになったんでしょう。

お久しぶりのアナログ水彩ということで、今回はいちじくのタルトを描きました。

6×4インチ、ハガキくらいの紙に一枚。今日はこの絵ができるまでを、描いた順番のとおりにご紹介します。


使った画材

  • LEATHER VILLAGE 水彩紙 — 独特な質感の手すき水彩紙
  • ホルベイン 透明水彩絵具 W405 5ml 24色セット — 愛用している絵具
  • ホルベイン アルミ製水彩パレット No.80(26仕切) — 絵具をスタンバイする相棒
  • サクラクレパス ピグマ 5種セット — 影とサインを描くペン
  • 三菱鉛筆 ポスカ 極細 白 — 最後に光を置くペン

このほかに、鉛筆と練りゴム、水筆とティッシュ。それだけです。道具が少ないほうが、迷わずに描けます。


1. 鉛筆で、ざっと下絵を描く

まずは鉛筆で、かたちをざっと取ります。きっちり描き込みません。「どこに何を置くか」が決まればそれで十分です。

今回はタルトを紙の下半分に置いて、上をぜんぶ余白にしました。いちじくが主役なので、そのまわりに空気を作ってあげたかったからです。

今回扱う水彩紙は6×4インチ、ハガキくらいの大きさです。大きな紙は向き合うのに気合いがいりますが、手のひらに乗るくらいの紙なら「今日は少しだけ描こうかな」と気軽に始められます。そして小さいぶん、一枚が早く仕上がる。

描き上がる喜びを何度も味わえることが、絵を続けるいちばんの力になると思っています。

水彩紙は、水をたっぷり含んでも波打ちにくく、絵具の滲みをきれいに受けとめてくれます。この絵の背景をよく見ると、紙の目が透けて見えるはずです。水彩を描くなら、ここだけは専用の紙を使ってあげてください。

▶ LEATHER VILLAGE 水彩紙 6×4インチを見る


2. 全体に、影を塗る

ここが、この描きかたのいちばんの特徴かもしれません。色よりも先に、影を塗ります。

いきなり本来の色から入るのではなく、まず全体にうすく影を置いて、明るいところと暗いところを決めてしまうのです。

こうすると、モチーフの立体感をつかみやすく、絵の骨組みが先にできあがるので、あとから色をのせても形が崩れません。色をひとつ置くたびに「あれ、立体感がなくなった」と悩むことが減ります。

影は青みのある灰色をうすく。茶色や黒ではなく青灰色にすると、影が重くならず、まわりの空気となじみます。

個人的には「W105 MANGANESE BLUE NOVA」と「W025 BRILLIANT PINK」を混ぜ合わせて使うことが多いです。モチーフの色の補色を混ぜて使うときもあります。

鉛筆のハッチングは、最後まで消しませんでした。手で描いたあとが少し見えているほうが、絵に体温が残る気がして。完璧に仕上げるより、描いていた時間が見えるほうが好きです。


3. いちじくとタルト生地に、色をのせる

いちじくの果肉

果肉は、外側から内側に向かって色が変わっていきます。皮に近いところはうすい黄みどり、その内側はクリーム色、中心は濃いピンクから赤へ。

外側の淡い色から順にのせて、乾かしながら中心の濃い色へ進みます。薄い色 → 濃い色。この順番だけは守ります。逆にすると濁ります。

真ん中のいちじくの皮に濃い赤むらさきを置くことで、コントラストが引き締まったんじゃないかしら。

タルトの生地

生地は、黄色 → 山吹色 → 焦げ茶の三段階。上のクリーム層はレモンイエローを薄く、下の生地は少しずつ茶色を足して、下にいくほど濃くしています。こうすると、平たい四角がちゃんと「厚みのあるもの」に見えてきます。

ホルベインは日本の老舗メーカーで、画材店でもネットでも手に入れやすいのがまず嬉しいところ。顔料の粒子が細かくて伸びがなめらかなので、水を多めに含ませたときの広がり方がとてもきれいです。

5mlのチューブが24色。多すぎず、少なすぎず。基本の色がひととおり揃っていて、それでいて混色でつくる余地がちゃんと残っている色数だと感じています。

このいちじくのピンクも、チューブから出したままの色ではありません。赤に少しだけ紫を足して、自分で混ぜてつくったものです。同じ「ピンク」でも、自分で混ぜた色には愛着がわきます。

▶ ホルベイン 透明水彩絵具 W405 24色セットを見る

絵具とパレットは、セットで考える

ホルベイン アルミ製水彩パレット No.80 に24色を並べた状態
わたしのパレット。虹の順に並べて、この配置はもう何年も変えていません。

ひとつだけ、絵具を買うときに一緒に用意してほしいものがあります。パレットです。

透明水彩は、チューブから出した絵具をパレットに並べて、そのまま乾かして固めて使います。「乾いたら使えないのでは?」と思われるかもしれませんが、大丈夫。水を含ませた筆でなでれば、すぐにまた溶けてくれます。

こうしておくと、描きたいと思ったときにすぐ描きはじめられます。毎回チューブから絞り出していると、その準備だけで気持ちが萎えてしまうことがある。パレットに色が並んでいる状態にしておくのは、描くための助走を短くする工夫でもあります。

わたしが使っているのは、ホルベインのアルミ製パレット No.80。仕切りが26個あるので、24色セットがちょうど収まって、2つ余ります。この余りが地味に効きます。よく使う色を足したくなったとき、ここに入れられるからです。

そして、絵具を並べる順番はとても大事です。虹の順(黄 → 橙 → 赤 → 紫 → 青 → 緑 → 茶)に並べておくと、混ぜたい色が隣どうしにあるので、探す時間がなくなります。

一度並べたら、その配置はずっと変えないでください。体が場所を覚えると、絵から目を離さずに色が取れるようになります。

使い終わりのパレットの汚れがリアルすぎるわね(笑)

▶ ホルベイン アルミ製水彩パレット No.80(26仕切)を見る


4. いちばん暗いところだけ、ペンで締める

ここでペンの出番です。今回はペンを線画には使いませんでした。最初に輪郭をなぞってしまうと塗り絵のようになって、水彩のやわらかさが死んでしまうかなと思ったので。

使うのは、絵の中でいちばん暗い部分だけ。いちじくとタルトが接している奥の影、果肉のいちばん濃い筋、タルト生地の気泡の粒々と影。

こういう「ここより暗い場所はない」という一点だけを、ペンで締めます。たったこれだけで、絵全体がしゃきっと引き締まります。水彩だけではどうしても出せない黒が一点あるだけで、他のすべての色が生き生きしてくるのです。

ペンはピグマを使いました。顔料インクで乾くと水に溶けないので、あとから水彩を足しても線が流れません。

大事なのは、入れすぎないこと。迷ったら、少ないほうを選んでください。あとから足すことはできますが、消すことはできません。

どうしても描きすぎる癖があるので気を付けているわ。

▶ サクラクレパス ピグマ 5種セットを見る


5. 最後に、光を置く

いちばん最後の工程です。果肉のつやっと光っている部分、いちじくの皮のハイライト。ここは白の極細ポスカで描いています。

透明水彩には白がありません。正確に言えば、白は「紙の色」です。なので教科書どおりなら、光る部分は最初から塗らずに残しておくのが正解です。

でも、それだととても窮屈なんです。「ここは残さなきゃ」と思いながら塗ると、筆がのびのび動いてくれない。だからわたしは、思いきり塗ってしまって、光は最後に足すことにしています。

マスキングすればいいのだけれど、この水彩紙に限ってはマスキングしたら表面がボロボロになるのよね…。

ポスカは水性顔料の不透明マーカーなので、乾いた水彩の上にもしっかり白がのります。極細タイプなら、果肉のほんの小さなきらめきも点で置けます。

ここでも大事なのは、入れすぎないこと。光は少ないほど強く見えます。三つか四つ、いちばん光ってほしいところにだけ置いてください。

▶ ポスカ 極細 白を見る


そして、サインを入れる

最後に、右下にペンでサインを入れました。

学生のころ、美術の先生に言われたことがあります。「自分の作品には、完成したらサインを入れなさい」

当時はよく意味がわかっていませんでした。うまくもない絵に名前を書くのが、少し恥ずかしくもありました。

でも今は、あの言葉の意味がわかる気がします。サインを入れるということは、「これで完成です」と自分で決めることなんだと思います。

絵はどこまでも直せます。もう少し暗くできる、もう少し描き込める。そうやって手を入れつづけていると、いつまでも終わりません。だから、どこかで自分で線を引く。「これでいい」と認めてあげる。

サインは、絵に入れるものであると同時に、自分に対しての合図なのかもしれません。いまでも、描き終えると必ず右下にペンを走らせます。先生の教えは、思っていたよりずっと長く残るものでした。


描いている様子を、動画にしました

ここまで書いてきた順番が、そのまま見られる101秒です。影が先に置かれて、最後に白い光が入る流れを追ってみてください。


おわりに

まとめると、こんな順番でした。

  1. 鉛筆でざっと下絵
  2. 全体に影を塗る
  3. いちじくとタルト生地に色をのせる
  4. いちばん暗い部分だけペンで締める
  5. ハイライトを白のポスカで置く
  6. サインを入れる

影から入って、光で終わる。

暗いところを先に決めてしまえば、あとは色をのせて、最後にきらめきを足すだけ。そう考えると、水彩は少しだけやさしくなります。

特別な道具はいりません。紙が一冊、絵具が一箱、ペンが二本。季節のものを一つ買ってきて、食べる前に描く。それだけで、その日のことがずっと残ります。

もしこの記事を読んで「描いてみようかな」と思ってくださったなら、それがわたしにとって何よりの喜びです。またお会いしましょう。


Amazonのアソシエイトとして、Blue Sapphireは適格販売により収入を得ています。

この記事を書いた人Wrote this article

ブルーサファイア

ブルーサファイア イラストレーター

三度の飯より風呂が好き。日本全国温泉巡りをするのが夢です。あちこちお気に入りのカメラとお写ん歩しながら、美味しい、可愛い、素敵!をモチーフにイラストを描いています。

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